【第4回】ペンギンと脂肪肝 〜「MASLD/MASH」ってなに?~|望月内科消化器内科クリニック|静岡市葵区の胃カメラ・大腸カメラ

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【第4回】ペンギンと脂肪肝 〜「MASLD/MASH」ってなに?~

【第4回】ペンギンと脂肪肝 〜「MASLD/MASH」ってなに?~|望月内科消化器内科クリニック|静岡市葵区の胃カメラ・大腸カメラ

2026年6月14日

皆さん、こんにちは。院長の小池です。今回のお話は『脂肪肝』についてです。今回はペンギンは関係ないのかな?と思われたかもしれませんが、ちゃんと今回もせっかくなのでペンギンのお話もさせていただきます。「ペンギンと脂肪肝??」と思われるかもしれませんが、実はとても関係があるのです。

・ペンギンと「脂肪肝」!?
ペチペチと歩く愛らしいペンギン。見てわかるようにぷっくらしてとてもかわいらしいですね。そう、彼らの身体は脂肪だらけなのです。ペンギンの体脂肪率は種や季節によって異なりますが、40-50%に達することもあります。もし自分の患者でそんな体脂肪の方がいたら、生活指導や治療の相談をすることでしょう。
しかしペンギンはそれが普通でとても元気で。それはなぜなのでしょうか? まず寒い地域で過ごすための防寒としての役割があります。またペンギンは、子育てや羽の生え変わりの時期に、何週間もまったくエサを食べない「絶食期間」を過ごします。その過酷な期間を生き抜くために、体脂肪を分解してエネルギーに変える必要があるため、脂肪を蓄えているのです。つまり、ペンギンにとって脂肪は「必要な脂肪」なんです。
ところが、飽食の時代を生きる私たち人間が脂肪が増え、脂肪肝になると、話は全く別です。ペンギンのような美しい適応ではなく、様々な病気へのカウントダウンが始まってしまいます。

・ なぜ人間は脂肪肝が悪化するの?
ペンギンは脂肪肝になっても炎症(MASH)をきっと起こしません(多分)。なぜ人間だけがMASHへ悪化してしまうのでしょうか?それは様々な要因が関与するとされています。
インスリン抵抗性と脂質毒性: 現代人の脂肪肝の背景には、糖質の摂りすぎなどによるインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)があります。これにより、処理しきれなくなった遊離脂肪酸が肝細胞に溢れ、細胞自体を攻撃する「脂質毒性」を引き起こします。
②多重ヒット(Multiple-hit)理論: 蓄積した脂肪に、さらに「腸内環境の悪化(腸肝軸の乱れによる毒素の流入)」や「活性酸素による酸化ストレス」や「遺伝的素因」など様々な要素が重なる(マルチプルヒット)ことで、単なる脂肪肝(MASLD)が、危険な脂肪肝炎(MASH)へと一気に加速します。


・「NAFLD/NASH」から「MASLD/MASH」へ
さて話はすこし医学の専門的な話に移ります。これまで脂肪肝は「アルコール由来の脂肪肝」と「お酒を飲まない人の脂肪肝」で分けられており、非飲酒者の脂肪肝は、NAFLDやNASHと呼ばれていました。しかし、世界的な診断基準が変わり、現在は「MASLD / MASH」という名前に刷新されています。これはただ単にアルコールの有無だけではなく、背景にある「血糖値の高さ、血圧、脂質異常などの代謝の異常(メタボリック要素)」がより重視されるようになった結果です。アルコール性脂肪肝に関してはなにより節酒・禁酒が大事で、第一の予防・治療になります。そのためアルコール性脂肪肝はここでは割愛し、「MASLD / MASH」についてお話していきます。

そもそも「MASLD / MASH」ってなに?。
脂肪肝には、次の2つの重大なステージがあります。

MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患): 肝臓の細胞に脂肪が溜まっている段階。まだ自覚症状はなく、細胞も壊れていないので採血でも異常がみられないことが多いです。
MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎): 溜まった脂肪が「酸化」し、肝臓に炎症が起きて細胞が壊れ始めた状態です。ここを放置すると、肝臓が硬くなる「線維化(せんいか)」が進み、最終的に肝硬変や肝がんへと進行してしまいます。人間は処理しきれなくなった脂質が細胞を攻撃し、MASLDからMASHへと悪化してしまうのです。


・ 肝臓を守る「食事の工夫」
それではMASLDにならないように、またMASHへの進行を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。それは生活習慣の改善が大事であり、何よりも日々の食事が鍵を握ります。今日からできる、具体的なケアをご紹介します。
① 「果糖(フルクトース)」を減らす
お菓子やジュース、加工食品などに含まれる人工的な果糖は、お米などの糖質(ブドウ糖)とは違い、一過性に直接すべて肝臓で代謝され、ダイレクトに脂肪へ作り変えられてしまいます。脂肪肝を最も悪化させる原因の一つですので、甘い飲み物やお菓子を控えることから始めましょう。
② 肝臓の炎症を抑える「地中海食」
メタボリック症候群への効果が認められているのが「地中海食」です。
良質な油: 調理には、肝臓の脂肪を減らし、抗酸化作用のあるオリーブオイル(オレイン酸)を使いましょう。
青魚: サバやイワシなどに含まれるEPAやDHA(オメガ3系脂肪酸)は、肝臓の炎症を抑える強い味方です。
抗酸化野菜: ブロッコリーやトマト、ほうれん草などの緑黄色野菜は、肝臓の酸化ストレスを軽減してくれます。
③ 「大豆製品」で良質なタンパク質
牛肉や豚肉などの赤身肉は控えめにして、タンパク質は上記の青魚含む魚介類や鶏肉、大豆製品で取るようにしましょう。特に大豆製品(植物性タンパク質)は、脂質を抑えつつ、肝臓の代謝を助けるアミノ酸を補給できるのでおすすめです。


・ MASLD/MASHの検査や治療
もし「脂肪肝」や「MASH」を疑った場合、どのような検査や治療を行うのでしょうか。基本となるアプローチと、最新の動向についてお話しします。
① 定期的な「スクリーニング(検査)」で早期発見
脂肪肝は「沈黙の臓器」と呼ばれる臓器で、悪化しても痛みがありません。ではどういったことで評価を行うのでしょうか。まずはやはり採血検査が大事になります。肝機能障害はもちろんのこと糖尿病・脂質異常症などがないかをチェックします。またそれに際し、血液検査データ(年齢、AST、ALT、血小板数)から簡単に計算できる「FIB-4 Index(フィブフォー・インデックス)」という指標を用いて、肝臓の硬さ(線維化)をチェックすることができます。数値が1.3以上(高齢者は2.0以上)の場合は、より詳細な検査が推奨されます そのため当院では、メタボリック症候群や肥満傾向の方には定期的な採血を行わせていただいております。また、超音波(エコー)検査を行うことで、肝臓の脂肪のつき具合や、炎症のサインなど肝臓の状態をリアルタイムかつ痛みのない形で詳細に評価することができます。

②運動療法
運動は「体重を減らすため」だけに行うのではありません。週に3〜4回、30〜60分程度の少し息が上がるくらいの有酸素運動(早歩きなど)を続けると、たとえ体重が大きく減らなくても、肝臓の脂肪が直接減少し、インスリンの効き目が良くなる(インスリン抵抗性の改善)ことが分かっています。

・ 合併症に応じた「薬での治療」
現在、脂肪肝の背景にある「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」といった生活習慣病の治療薬が、MASHの改善にも非常に有効であることが分かっています。
糖尿病のお薬(GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など): 体重を減らす効果とともに、肝臓の脂肪や炎症、さらには線維化を抑える効果が報告されており、当院でも患者さんの状態に合わせて選択しています。
ビタミンE: 強い抗酸化作用を持ち、肝臓の炎症(MASH)を抑えるために処方されることがあります。

・ 私たちは、ペンギンではない
ペンギンは生きるために脂肪を蓄え、時期が来ればきちんと消費します。しかし、現代を生きる私たちは、蓄えるばかりで消費する機会をなかなか持てません。私たちの肝臓は、残念ながらペンギンほどうまく消費できるようにはできていないのです。
「まだどこも痛くないから大丈夫」と思わずに、健診で「脂肪肝」を指摘された方、最近お腹周りが気になってきた方は、ぜひ一度気軽にご相談ください。あなたの大切な肝臓をMASLD/MASHの危機から守るために、食事のアドバイスから最新の治療まで、一緒に歩んでいきましょう。

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